〈トポフィリ〉展のはじまり

初の更新は河田が担当します。

私たち企画チームが〈トポフィリ〉展に至った経緯と展覧会の概要について書きたいと思います。


まず、プロジェクト開始当初からの大きなテーマとして「思想史としての展覧会」というものがありました。
通常は文字や言葉を媒体とすることが多い思想史をあえて空間におこし、視覚化することでこそ「見えて」くるものがあるのではないか、という考えのもと、最終的には自分たちでそのような展覧会をつくることを目標に準備を進めてきました。


この思想史の視覚化という方法は、独自の図像解釈を反映させながら複数のイメージをパネルに並べて配置した、アビ・ヴァールブルクの「ムネモシュネー」にならい、また、近代の神話や集団的オブセッションを空間化したハラルト・ゼーマンの展覧会から学んだものです。
とはいえ、本展はヴァールブルクやゼーマンと直接関係のあるテーマを選んではいません。

彼らの「方法」を吸収し、最終的に選ばれた「テーマ」は、ガストン・バシュラールがその著作『空間の詩学』で展開し、彼自身が「トポフィリ(場所への愛)」と名付ける特殊な探究を視覚化する、というものです。
バシュラールはこの著作で数々の詩作を引きながら、家、貝殻、ミニアチュールなど詩的イメージを喚起する「空間」について研究し、そこから生まれる想像力の拡散、集中→螺旋運動を解き明かします。
この運動はまた、家や貝殻がもつ拡散と集中、そして螺旋形の動きと重なり、その思考自体が円環を成すものです。

このように、彼の思想は空間や場所に強く牽引されたものであるといえます。
バシュラール自身は、この探究を主に詩を引くことで行っていますが、今回の展覧会ではそれを空間化することを試みます。

科学哲学者として出発しながら4大元素を探究し、この『空間の詩学』で近代科学の思考を捨てて夢想の研究を行ったバシュラールと、前近代の、視覚で思考するアナロジーの方法はかなり近いと感じます。
文字や言葉を用いた論理的な説明ではなく、感覚を通してある思考を理解し、体感できる空間をつくりだすことがこの展覧会の目的です。

そのため、主な展示物はバシュラールが『空間の詩学』で述べる方法にならって企画チームが構成・制作するという、かなり特殊なかたちの展覧会になります。
また、本展趣旨に賛同してくださった数名のアーティストの作品も、特別出品という形で展示できる予定です。


来月のopenに向けて、今準備の真っ最中です。
良い展覧会にできるよう頑張りますので、楽しみにしていてください!
出品アーティストの情報も随時このブログで発表予定です!